ConA誘導肝炎は自己免疫性あるいはウイルス肝炎のモデルで、活性化されたT、NK、NKT細胞が肝実質細胞を障害すると考えられている。そこではじめにC3H/Heマウス(8週、♀)におけるConA誘導肝炎でのアポトーシスと組織障害の進行を12時間目まで経時的に詳しく調べた。その結果、ConAを鎖骨下静脈に静注すると、GOTおよびGPTの血中濃度が次第に上昇して9時間目にピークとなり、12時間目では少し下がった。DEVD-AMCを基質として測定したカスパーゼ活性(おもにカスパーゼ3)も次第に上昇した。DNAの分解(ラダー形成)は9時間目で明らかに認められた。組織切片をHE染色して調べたところ初期には一過性の鬱血が観察され、9時間目以降には実質細胞の障害が認められた。 我々のこれまでの研究から急激なアポトーシスに伴って好中球の浸潤が見られることが判明している。上で述べたようにConA誘導肝炎でも急激なアポトーシスが見られたので好中球の浸潤が見られる可能性が生じた。そこで1日前に抗Gr-1抗体200μgを腹腔内投与し、好中球を一過的に枯渇したところConA誘導肝炎はGOTおよびGPTの血中濃度でみても組織切片のHE染色でみても著しく抑制された。一方アイソタイプが同じ対照抗体ではそのような効果は見られなかった。 最近ある種のマウスではGr-1抗原は好中球以外にリンパ球系樹状細胞にも検出されると報告されている。そこでC3H/Heマウスの肝臓をコラゲナーゼで潅流したあとメトリザマイドを用いて低比重画分(樹状細胞に富む)を得て、抗Gr-1抗体と抗CD11c抗体で2重染色しフローサイトメータで分析したところ、両抗原をもつ細胞は極めて少ないことが判明した。言い換えると、用いた抗Gr-1抗体は好中球に特異的であることが確認された。
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