研究概要 |
ConA誘導肝炎は自己免疫性あるいはウイルス肝炎のモデルで、活性化されたT、NK、NKT細胞が肝実質細胞を障害すると考えられている。ConA投与後GOTおよびGPTの血中濃度は次第に上昇して9時間目にピークとなり、12時間目では少し下がった。組織切片をHE染色して調べたところ初期には一過性の鬱血が観察され、9時間目以降には実質細胞の障害が認められた。このConA誘導肝炎で好中球の著しい浸潤が見られたので予め抗Gr-1抗体200μgを腹腔内投与して好中球を一過的に枯渇したところConA誘導肝炎はGOTおよびGPTの血中濃度でみても組織切片のHE染色でみても著しく抑制された。一方アイソタイプが同じ対照抗体ではそのような効果は見られなかった。Con A誘導肝炎では特にIFN-γが重要な役割を演じていることが知られている。そこで同様に予め抗Gr-1抗体200μgを腹腔内投与し、好中球(Gr-1強陽性)を一過的に枯渇したところ、Con A誘導肝炎に伴うIFN-γ産生は血中濃度でみても肝臓単核球の細胞内IFN-γ染色でみても著しく抑制された。一方アイソタイプが同じ対照抗体ではそのような効果は見られなかった。このとき肝臓単核球中の主なIFN-γ産生細胞はT細胞とNK細胞であり、Gr-1陽性細胞はほとんど関係していなかった。記憶キラーT細胞は抗CD3抗体によるIFN-γ産生の主要な細胞であるといわれているが肝臓に存在する記憶キラーT細胞(Gr-1dull+,CD8+)はCon A投与により消失した。そこで脾臓細胞にCon Aを加えてIFN-γ産生が見られる条件下、ナイロンウール「T細胞」にCon Aを加えたところIFN-γ産生はほとんどみられないのに対し、ごくわずかの「好中球」を加えただけでIFN-γ産生が著しく回復した。以上の結果から、抗Gr-1抗体処理は、肝臓に浸潤する好中球を枯渇することによりCon Aによって誘導されるIFN-γ産生を抑制し、結果として肝炎を著しく抑制したものと推定された。
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