ヒト・アストロサイトーマ細胞において、ヒスタミン刺激に伴うヒスタミンH_1受容体の細胞内移行と薬物感受性変化に関して、細胞内Ca^<2+>シグナリングを介した制御機構を中心に解析し、次の知見を得た。第一に、細胞表面のH_1受容体はヒスタミンに対して高親和性(Kd:μMオーダー)を示し、一方、ヒスタミン刺激にともない細胞内に移行したエンドソームH_1受容体は、ヒスタミンに対して低親和性(Kd:mMオーダー)を示すことが判明した。エンドソームにおいて、受容体のヒスタミン結合部位は内側に存在すると考えられることから、ヒスタミンが膜を透過しにくいために受容体に対して低親和性を示すと考えられるが、Ca^<2+>/カルモジュリン依存性酵素(CaMキナーゼIIやカルシニューリン)による受容体自身の構造変化が関与する可能性もある。第二に、受容体の細胞内移行が阻害される高張条件下においてヒスタミンで刺激されたH_1受容体は、ヒスタミンに対して正常な高親和性結合能を有するにもかかわらず、細胞表面に留められたH_1受容体自身は機能的に脱感作されていた。従って、生理的条件下では、このような脱感作された受容体が細胞内へ移行するものと考えられる。第一に、ヒスタミン刺激によるH_1受容体の細胞内移行は、イオノマイシンを用いた細胞内Ca^<2+>濃度の持続的な上昇によって影響を受けないことが判明した。これは、ヒスタミン刺激によって生じる一過性の細胞内Ca^<2+>濃度上昇が受容体の細胞内移行を一過性に阻害するというこれまでの本研究と対照的な結果であるが、細胞内Ca^<2+>濃度が持続的に上昇するような異常興奮状態では、受容体を速やかに細胞内へ移行させる機構が作動する可能性が考えられる。今後、細胞内Ca^<2+>シグナリングによる受容体の細胞内移行と薬物感受性変化の制御機構の詳細を更に明らかにする予定である。
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