研究概要 |
本研究は、DNAの構造的性質に基づいたゲノムクロマチンの構築とその遺伝子発現制御における役割を明らかにすることを目的としており、以下の二つの観点から研究を展開した。 1.特殊なDNA構造によるクロマチンの改変を利用した転写制御機構の解析:出芽酵母α細胞ではa-細胞特異的遺伝子(BAR1など)はα2/Mcm1Pによって抑制されており、そのプロモーターではヌクレオソームがポジショニングしている。本研究において、非B型構造を形成するpoly dA・poly dT、poly dG・poly dC配列をBAR1プロモーターに挿入したところ、BAR1の脱抑制が起こりα-factorが分解された。この結果は、ヌクレオソームポジショニングが転写抑制に重要な役割を果たしていることを示しているとともに、DNA構造に基づくヌクレオソーム配置の改変によってin vivoで転写活性を制御できる可能性を提示している。 2.トリプレットリピート配列の特殊DNA構造とクロマチンの構築:ゲノムの反復配列とクロマチンの構築という観点から、神経筋疾患遺伝病の原因となるトリプレットリピート配列のクロマチン構造の特徴について研究を進めている。今年度は、Friedreich運動失調症の原因となるGAAリピートに焦点を絞った。近年、GAAリピートは三重鎖DNAを基盤としたsticky DNA構造を形成することが報告されており、Friedreich失調症との関連が注目されている。今回、様々な長さの(GAA)_n(n=12,23,89,126)をヌクレオソーム中央部位またはヌクレオソームフリー領域に挿入したミニ染色体を構築して、そのクロマチン構造を解析した。その結果、GAAリピートが長くなるほど、ミニ染色体におけるヌクレオソームポジショニングが破壊されることが示され、sticky DNAの形成との関連が示唆された。
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