研究概要 |
プロテオグリカンは重要な細胞外マトリックス構成成分であるが,脳微小血管における知見は少ない。そこで,ヒト脳微小血管内皮および周皮細胞の培養系を用いて,その特性を検討した。 ヒト脳微小血管内皮および周皮細胞をコンフルエントまで培養後,コア蛋白遺伝子の発現をRT-PCRで,細胞層と培地に蓄積したコア蛋白をWestern blot分析で,グリコサミノグリカン糖鎖の二糖組成を蛍光標識糖鎖電気泳動法で分析した。 血管内皮細胞では,パールカンおよびビグリカンの発現が認められたのに対し,周皮細胞ではパールカンコア蛋白は検出されず,主としてシンデカン-1,ビグリカンおよびデコリンの発現が確認された。内皮細胞では細胞層と培地においてパールカンとビグリカンが蓄積していた。これに対し,周皮細胞では細胞層においてシンデカン-1およびデコリンが,培地においてビグリカンおよびデコリンが蓄積していた。ヘパラン硫酸糖鎖の二糖組成は,内皮細胞ではGlcA/IdoA-GlcNAc>GlcA/IdoA-GlcNS>GlcA/IdoA(2S)-GlcNSであり,一方,周皮細胞ではGlcA/IdoA-GlcNS>GlcA/IdoA-GlcNAc>GlcA/IdoA(2S)-GlcNSであった。コンドロイチン/デルマタン硫酸糖鎖の二糖組成の分析の結果,周皮細胞ではビグリカンよりもデコリンにおいてイズロン酸含量が高いことが示唆された。 以上より,ヒト脳微小血管において発現しているプロテオグリカン主要分子種が,内皮細胞ではパールカンおよびビグリカンであるのに対し,周皮細胞ではシンデカン-1,ビグリカンおよびデコリンであることが示唆された。また,内皮と周皮ではヘパラン硫酸糖鎖の微細構造に違いがあること,および周皮細胞のビグリカンおよびデコリンのデルマタン硫酸糖鎖の微細構造にも違いがあることが明らかになった。
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