研究概要 |
1.空間記憶に及ぼすendomorphin-1の作用をMorris型水迷路を用いて調べた。 (1)Endomorphm-1とscopolamineの単回投与 無処置マウスのゴール到達時間は,5日間にわたって経日的に短縮し,学習効果が見られた.6日目にscopolamine(0.5および1mg/kg)を投与すると,ゴール到達時間が有意に延長した.Scopolamine(0.5mg/kg)によるゴール到達時間の延長は,endomorphin-1(42pmol)を投与しても影響されなかった。 (2)Scopolamineの反復投与 Scopolamine(0.1および0.5mg/kg)を反復投与すると,control群と比較してゴール到達時間はほとんど短縮しなかった。 (3)Endomorphin-1とscopolamineの反復投与 Scopolamine(0.1および0.5mg/kg)によるゴール到達時間の延長に対してendomorphin-1(42nmol)はほとんど影響しなかった。 2.脳内モノアミン代謝に及ぼす作用 Endomorphin-1およびscopolamineを単独あるいは併用投与すると,大脳皮質や海馬においてドパミン,セロトニンなどの含量変化が見られたが,行動変化との密接な関連性は認められなかった。 以上の結果より,scopolamineを単回あるいは反復投与して空間記憶を障害させたマウスにendomorphin-1を単回あるいは反復投与しても有意な変化は認められなかったことから,endomorphin-1はコリン作動神経系の機能障害による空間記憶障害には影響しないことが示唆された.今後は,endomorphin-1の短期記憶に及ぼす作用を詳細に検討する予定である。
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