研究概要 |
オピオイドによる痴呆モデル動物の作製に関する研究の一環として遺伝子改変動物を利用して短期および長期記憶におけるμ-オピオイド受容体の役割を検討した. 1.自発的交替行動におけるμ-オピオイド受容体の役割 μ-オピオイド受容体欠損マウスの自発的交替行動(短期記憶の指標)は正常マウスと比較して有意に低下した.さらに,Y字型迷路内アームへの移動回数も有意に減少した. 2.モリス型水迷路課題におけるμ-オピオイド受容体の役割 μ-オピオイド受容体欠損マウスと正常マウスを比較すると,ゴール到達時間(長期記憶の指標)は同程度で有意差は認められなかった.一方,μ-オピオイド受容体欠損マウスの遊泳速度は正常マウスより有意に高かった. 3.Novel recognition試験におけるμ-オピオイド受容体の役割 μ-オピオイド受容体欠損マウスのオープンフィールドにおける場所選好はほとんど見られなかったが、recognition index(短期記憶の指標)は有意に低下した.オープンフィールド内の移所運動は増加傾向のみで顕著な変化は見られなかった.また,μ-オピオイド受容体欠損マウスが黒色塗装したゴルフボールの半球を嫌う可能性が考えられるので,2日間のアダプテーション後,第3日目に白色プラスチック製ボトルキャップと黒色塗装のゴルフボールの半球をそれぞれ一つずつ入れたオープンフィールド内を5分間自由に探索させたが,それぞれの物体に対する探索行動に有意差は認められなかった.
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