研究概要 |
κ-オピオイド受容体作動薬は学習記憶能と関連が深いグルタミン酸などの神経伝達物質の遊離を調節していることが報告されている。当研究室では、Y字型迷路試験でβ-amyloid(Aβ)タンパクによる自発的交替行動障害モデル動物に対してκ-オピオイド受容体作動薬のU-50,488Hが緩解作用を有することを明らかにしてきた。今回我々はAβタンパクの活性フラグメントであるAβ_<25-35>によって学習記憶障害モデル動物を作製し、(1)新奇物質認知試験においてU-50,488Hが緩解作用を示すかどうかを検討した。また、(2)その緩解作用についてグルタミン酸作動性神経との関わりを明らかにするためにCaMKIIαサブユニットのリン酸化を調べた。 実験には6週齢のICR系雄性マウスを用いた。4日間37℃でインキュベーションしたAβ_<25-35>を側脳室内に3nmol/3μL注入し、Aβ_<25-35>の投与7日目に新奇物質認知試験を行った。第一セッションの30分前にU-50,488H(0.7μmol/kg)を腹腔内投与した。第二セッションでの新奇物質への探索行動時間の割合をrecognition indexとし作業記憶の指標とした。行動実験直後に断頭し、脳を摘出しwestern blotting用にサンプル調整を行った。 Aβ_<25-35>の投与により第一セッションでの場所嗜好に対しては何ら影響を与えなかったが、第二セッションでのrecognition indexは有意に低下したことからAβ_<25-35>が学習記憶機能を障害したことが確認された。一方、U-50,488Hは、その障害を有意に緩解し、その緩解作用にはCaMKIIαサブユニットのリン酸化の変化を伴っていることが明らかになった.
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