研究概要 |
医薬品は安定供給という点から考えると,天然資源の有効利用や工業的生産効率が高くなければならない。本年はミカン科植物から抽出でき化学合成も比較的容易なフェニルプロパノイド類に着目し向精神作用を見出せないか行動薬理学的に検討した。C_6C_3炭素骨格ユニットから成るフェニルプロパノイドはみかん科だけでなく種々の植物中に多数存在している。これまでの報告は免疫活性を高める可能性を示したものが多く,様々な薬理学的作用が期待できるが,その詳細についてはほとんど検討されていない。 そこで代表的な6種類の植物由来のフェニルプロパノイドについてそれぞれ1%DMSOにて1mg/kgに調整しマウスに全身投与して一般行動やscopolamine HBr誘発自発的交替行動障害に対する作用を評価した。その結果,それぞれの化合物は自発運動量,運動協調性,情動性,筋肉の緊張性などには全く影響を及ぼさなかった。一方scopolamine HBr誘発自発的交替行動障害に対し,4-allyl-2,6-dimethoxyphenol (ADP)のみが有意にその障害を緩解し,sinapyl alcohol,4-allyl-2,6-dimethoxy-3-(3-methyl-2-btenyl)phenol (ADMB),coniferyl alcoholあるいは有意でないが緩解傾向を示した。 以上の結果から,今回検討したフェニルプロパノイド類は一般行動に影響を与えることなく脳機能障害を改善する効果が期待できることが示唆された。
|