研究概要 |
平成14年度は,マウスマクロファージ様RAW264.7細胞およびマウス腹腔マクロファージを用いて,酸化LDL刺激下でのコレステロールエステルの蓄積反応におけるホスホリパーゼA_2(PLA_2)の役割について検索した。 1.[^3H]オレイン酸で膜リン脂質を標識した細胞を,酸化LDLで刺激すると[^3H]コレステロールエステル(CE)が蓄積するとともに,遊離[^3H]オレイン酸が増加し,[^3H]ホスファチジルコリンが減少した。このことから,酸化LDLにより膜リン脂質の加水分解に伴い遊離されたオレイン酸がCEのアシル鎖に利用されていると推察された。そこで,このオレイン酸遊離反応にPLA_2が関与する可能性を明らかにするために,PLA_2の各分子種(cPLA_2,sPLA_2,およびiPLA_2)の阻害剤を用いて,[^3H]CE産生および[^3H]オレイン酸遊離反応に対する影響を検討した。その結果,cPLA_2の阻害剤であるMAFPは,酸化LDL刺激下での遊離[^3H]オレイン酸の増大および[^3H]ホスファチジルコリンの減少を抑制するとともに,[^3H]CE産生を著しく阻害した。しかしながら,sPLA_2およびiPLA_2の阻害剤は何の影響も示さなかった。また,MAFPは[^3H]コレステロール存在下に酸化LDLで刺激した際に誘起される[^3H]CE産生も抑制した。 2.酸化LDLでの刺激下では,cPLA_2の活性およびタンパク質量に変動は見られなかった。このことは,酸化LDL刺激に伴いcPLA_2の膜リン脂質(基質)に対する水解活性が亢進したことによりオレイン酸の遊離反応が誘起されることを示唆する。そこで,Ca^<2+>イオノホア刺激によるcPLA_2を介したオレイン酸およびアラキドン酸の遊離反応に対する酸化LDLの効果について検討した結果,酸化LDLはCa^<2+>イオノホア単独刺激による各脂肪酸の遊離反応を有意に促進させた。 これらの成果は,マクロファージにおいて酸化LDLでの刺激に伴いcPLA_2の水解活性が亢進し,その結果遊離された脂肪酸がCEのアシル鎖として供給されることを示しており,cPLA_2がマクロファージの泡沫化の原因となるCEの蓄積過程の一端を担う可能性が示唆された。
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