研究概要 |
硫酸化グリコサミノグリカン鎖は、様々な細胞増殖因子や細胞外マトリックス成分と相互作用し、細胞接着、増殖、分化,形態形成といった細胞活動を制御している。硫酸化グリコサミノグリカン鎖の機能発現は生合成によって精密に調節されている。本研究では、以下の5つの内容を明らかにした。 1)コンドロイチン硫酸鎖の生合成の開始と伸長を担う第二のN-アセチルガラクトサミン転移酵素(GalNacT-2)の同定: GalNAcT-1と約60%の相同性を示す遺伝子が1種類存在することを見いだし、その遺伝子産物の解析から、GalNAcT-2をコードすることを明らかにした。 2)グルクロン酸転移酵素GlcAT-Iのショウジョウバエのオーソログの同定: ショウジョウバエには、GlcAT-Iと相同性のある遺伝子が3種類存在することを見いだし、その遺伝子産物の解析から、3種ともGlcAT-I活性を持つことが判明した。 3)コンドロイチン硫酸鎖の重合反応を担う新規タンパク質のcDNAクローニングと発現: コンドロイチン合成酵素(ChSy)の相同遺伝子がさらに1種類存在し、この相同遺伝子とChSyを共発現させると、コンドロイチンの重合化が観察できた。この相同遺伝子をコンドロイチン重合化因子と名付けた。 4)ChSyの線虫オーソログの同定と線虫におけるコンドロイチンの機能解析: ChSyの線虫オーソログを同定し、ChSyの発現をRNAi法で阻害すると、コンドロイチンの合成不全が生じ、線虫の初期胚において細胞質分裂が逆転し、細胞が多核化した。 5)ヘパラン硫酸鎖の重合機構とその合成を担う糖転移酵素の結晶構造解析: ヘパラン硫酸鎖の生合成は、5種のEXTファミリー(EXT1,2,EXTL1,2,3)により司られているが、EXT1とEXT2が生体内で相互作用し、この相互作用がヘパラン硫酸鎖の重合に必須であることを明らかにした。さらに、EXTL2とドナーおよび受容体基質とのtemary complexのX線結晶構造解析に成功した。
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