研究概要 |
本年度はプロテインキナーゼC(PKC)選択的阻害剤PKC412(4'-N-benzoyl staurosporine)の癌転移抑制効果を、高転移性のマウスメラノーマ細胞(B16-F10およびB16-BL6)を用いてin vivoおよびin vitroにて検討した。まず、PKC412(0.5, 5および50μM)を37℃で1時間処理したB16-F10およびB16-BL6細胞を血行性癌転移モデルマウスに尾静脈内接種したところ、PKC412はいずれの癌細胞の血行性転移による肺結節形成能も用量依存的に有意に抑制した。その作用機序を解明するためにin vitro実験においてPKC412処理後のB16-F10およびB16-BL6細胞のPKC活性変化を測定したところ、PKC412は濃度依存的に有意にPKC活性を抑制したことより癌転移抑制効果はPKCを介するものであることを最初に確認した。次に、PKC活性の抑制による癌細胞の分子生物学的変化を探るため、in vitroにおいてはケモインベージョンアッセイを用い、in vivoにおいてはB16-BL6細胞と細胞外基質(マトリゲル)の混合物をマウス皮下に接種するモデルを用い、それぞれPKC412による癌細胞浸潤能抑制作用を調べた。その結果、いずれの実験系によってもPKC412の用量依存的な癌細胞浸潤能の抑制効果が認められ、PKC412による癌転移抑制効果には癌細胞の浸潤能抑制作用の関与していることが明らかとなった。さらに、in vitro実験にてPKC412はB16-F10細胞のウサギ血小板凝集能を有意に阻害することも解明した。最後に、自然癌転移モデルマウスを用いたin vivo実験においてPKC412(200mg/kg/day)は4週間の経口投与によりマウスのサバイバル時間を有意に延長することも見出した。
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