私達は以前HeLa細胞においてGα11の恒常的活性化型がアポトーシスを誘導し、Rhoの下流で作用することが知られているRhoキナーゼ(ROCK-1)がカスパーゼで切断され活性化されることを見出し、今回その分子機構について検討し、2つの経路が関与し相加的にアポトーシスを誘導しているという結論を得た。ひとつはインスリンによる生存シグナルの中心的分子であるAktのリン酸化をGq/11シグナルを活性化させるカルバコールが低下させ、チロシンホスファターゼの阻害剤であるorthovanadateやpervanadateによりその低下が一部抑制されること、その低下はIRS-1に特異的におこりAktのリン酸化が低下することによると考えられた。もうひとつは、カルバコールによりRhoAが活性化されること、RhoAのドミナントネガティブ体を発現させるとカルバコールによるROCK-1の切断を抑制すること、アポトーシス細胞を減少させることを見出した。さらにRhoAの恒常的活性化型によってもROCK-1の切断を増加させることを見出し、RhoAが活性化することによりアポトーシスが起こるものと示唆された。またAktの活性型は両経路によるアポトーシスを抑制した。一方、以前私達は胎生期脳の脳室周辺にGαi2とGγ5が選択的に局在することを見いだした。今回この分子腫の神経前駆細胞の機能との関連について調べ、次のような結果を得た。すなわちGi2シグナルが神経前駆細胞の増殖を促進すること、さらに脳の発生初期に発現が報告されているG蛋白質共役型受容体のアゴニストの中でエンドセリンで有意な[^3H]チミジンの取込促進が認められ、細胞接着基質分子フィブロネクチンによってさらに強い取込促進効果が見られることである。
|