研究概要 |
カルボキシルエステラーゼ(エステラーゼ)は、エステルやアミド結合を有する化合物を極めて効率良く加水分解することから、これらの結合を有する薬物やプロドラッグの代謝過程において重要な役割を果たしている。ところでエステルやアミド結合を有する薬物の中枢神経系への移行を考慮した場合、脳に存在するエステラーゼの局在部位や特性が脳への移行性に極めて重要であることが予想される。これまで、申請者らはヒト脳毛細血管内皮細胞にエステラーゼ局在していることを明らかにしており、さらに脳毛細血管内皮細胞には種々のトランスポーターが発現していることから、代謝・排出の連関によりエステラーゼが薬物の脳移行性に重要な働きをしている可能生が考えられる。そこで本研究においては、ヒト脳に発現するエステラーゼの転写調節領域を明らかにするとともに、ヒト脳エステラーゼと同様の分子種が発現しているマウスおよびイヌの転写調節機構を調べ、ヒト脳のモデル系としての有用性を確かめることを目的として研究を行ってきた。平成14年度は、主としてヒトおよびマウスエステラーゼの転写調節機構を調べるため、ヒトゲノムおよびマウスゲノムから転写調節領域を含むゲノムのクローニングを行い、それぞれの遺伝子の5'上流部位を含むクローンを得た。さらに、これらの遺伝子をルシフェラーゼを含むpGL3ベクターにサブクローニングした後、哺乳動物培養細胞にトランスフェクションして転写活性を調べた。その結果、ヒトとマウスではTATA-Boxはなく、またGC-Box, CCAA-Boxなど転写調節領域の一部に相同性が高い部位がみられ、基本プロモーター部位は類似している可能性が考えられた。そこで、ゲルシフトアッセイにより結合タンパクを調べたところ、ヒトではGC-BoxにSp1が結合することが明らかとなった。現在、マウスについて解析を進めているところである。平成15年度は、本年度の結果を踏まえてさらに研究を発展させる予定である。
|