研究概要 |
カルボキシルエステラーゼ(エステラーゼ)は、エステルやアミド結合を有する化合物を効率良く加水分解することからプロドラッグの代謝過程において重要な役割を果たしている。ところでこのような薬物の中枢神経系への移行を考慮した場合、エステラーゼの局在部位や特性が脳への移行性に極めて重要であることが予想される。これまで、申請者らはヒト脳毛細血管内皮細胞にエステラーゼ局在していることを明らかにしており、さらに脳毛細血管内皮細胞には種々のトランスポーターが発現していることから、代謝・排出の連関によりエステラーゼが薬物の脳移行性に重要な働きをしている可能性を示唆している。そこで本研究においては、ヒト脳に発現するエステラーゼの転写調節領域を明らかにするとともに、相同性の高いエステラーゼ分子種が発現しているマウスの転写調節機構を調べ、ヒト脳のモデル系としての有用性を確かめることを目的として研究を行ってきた。本研究において、ヒトおよびマウスエステラーゼの転写調節機構を調べるため、ヒトおよびマウスゲノムから転写調節領域を含むゲノムのングを行い、それぞれの遺伝子の5'上流部位を含むクローンを得た。さらに、これらの遺伝子をルシフェラーゼを含むpGL3ベクターにサブクローニングした後、哺乳動物培養細胞にトランスフェクションして転写活性を調べた。その結果、ヒトとマウスエステラーゼ遺伝子の転写調節領域にはGC-Box, CCAAT-Boxなど共通した転写調節領域がみられ、基本プロモーター部位は類似している可能性が考えられた。そこで、ゲルシフトアッセイにより結合タンパクを調べたところ、ヒトではGC-BoxにSp1が結合することが明らかとなった。さらに、ヒトにおいてはinverted duplicationの結果と考えられる2つの遺伝子が存在し、、それぞれ異なった制御機構を受けていることが明らかとなった。
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