研究概要 |
膜透過性抗菌ペプチドであるアジアヒキガエル由来のブフォリン2を細胞内薬物導入ベクターとして利用する可能性を探るため,誘導体BF2d(TRSSRAGLQWPVGRVHRLLRKGGC-(Texas Red)-amide)を合成し,ヒト子宮頸癌細胞HeLaおよび繊維芽細胞TM12との相互作用を詳細に調べた.共焦点レーザー顕微鏡観察からBF2dは37℃において両細胞膜を透過し,核内にまで分布することが明らかとなった.また,低温(4℃)あるいは代謝阻害剤(アジ化ナトリウム)存在下でもこの細胞内移行は抑制されなかったことから,エネルギー非依存的な受動的機構によって膜を透過したと考えられる.これは,ブフォリン2が人工脂質膜を透過する事実(Biochemistry 39,8648(2000))と符合する.細胞内移行の時間依存性を調べたところ,15分程度で最大取り込みに達し,その後何らかの排出機構により,取り込みが徐々に減少することが明らかとなった.BF2dの細胞毒性をMTT assayで評価したところ,代表的抗菌ペプチドであるマガイニン2誘導体が5μM以上で毒性を示すのに対し,BF2dは100μMにおいてもほとんど毒性を示さないことが分かった.そこで,2価リンカーであるBS3を用いてBF2dとGreen Fluorescence Protein (GFP)を結合させ,HeLa細胞に加えたところ,このBF2d-GFP複合体の細胞内移行が観測されたことから,BF2dはTexas Redのような低分子化合物のみならず,蛋白質の細胞内導入ベクターとして有用であることが明らかとなった.
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