アフリカツメガエル由来のマガイニン2に代表されるように、多くの抗菌性ペプチドは細菌の細胞膜を標的とし、その透過性を亢進させることによって殺菌効果を発揮する。しかし、アジアヒキガエル由来のブフォリン2は、ほとんど膜傷害を引き起こすことなく効率的に膜を透過し、細胞内に容易に進入してDNAやRNAと結合し抗菌力を発揮する。そこで、このブフォリン2(TRSSRAGLQFPVGRVHRLLRK)の効率的な膜透過の機構解明のため、F11W誘導体を用い、蛍光を利用してリポソームとの相互作用を調べた。リポソーム膜の脂質組成を従来の卵黄ホスファチジルグリセロール/卵黄ホスファチジルコリン(1:1)から、より負電荷の多い卵黄ホスファチジルグリセロール100%に変えたところ、マガイニン2同様に、リポソームに内封した蛍光色素カルセインの漏出とNBDラベル脂質のジチオナイト消光反応を利用して評価した脂質のフリップフロップがカップリングして観測された。また、トリプシン内封リポソームを用いて評価したペプチド自身の膜透過効率は、この脂質組成変化に伴い減少した。また、P11A置換によりブフォリン2の性質がマガイニン様に変化すること、膜透過には膜に誘起される正の曲率が関与すること、およびNMRによって決定されたブフォリン2のコンフォメーションを総合的に考察し、「ブフォリン2は基本的にマガイニン2同様のペプチド脂質-超分子複合体ポアを形成するがブフォリン2の場合、短い両親媒性ヘリックス(5-21)に多くの正電荷が集中するため、強い静電反発によってポアが著しく不安定化するため、膜損傷なく効率的に膜透過できる」と結論づけた。
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