ヒトを含むあらゆる動物および植物から500種以上の抗菌性ペプチドが単離され、これらは先天性免疫機構に重要な役割を担っていることが明らかとなってきている。アフリカツメガエル由来のマガイニン2に代表されるように、多くの抗菌性ペプチドは細菌の細胞膜を標的とし、その透過性を亢進させることによって殺菌効果を発揮する。しかし、アジアヒキガエル由来のブフォリン2は、ほとんど膜傷害を引き起こすことなく効率的に膜を透過し、細胞内に容易に進入してDNAやRNAと結合し抗菌力を発揮すると考えられている。 本研究は、ブフォリン2の効率的膜透過機構を解明し、さらにこの特性を利用して、細胞内に薬物を導入するためのベクターとして応用することを目的とした。まず、ブフォリン2は基本的にマガイニン2同様のペプチド-脂質超分子複合体ポアを形成するが、ProIIによって形成される歪んだ短い両親媒性ヘリックス(残基5-21)に多くの正電荷が集中するため、静電反発によってボアが著しく不安定化するため、膜損傷なく効率的に膜透過できることを明らかにした。ついで、N末端あるいはC末端に薬物モデルとして蛍光色素Texas Redを結合させたブフォリン2誘導体を用い、ヒト細胞(HeLaおよびTM12)との相互作用を検討した結果、エネルギー代謝阻害剤や温度の影響を受けず、ペプチドを細胞内に導入できることを見いだし、さらに本ペプチドの毒性がきわめて低いことから、細胞内薬物導入ベクターとして有用であることを明らかにした。 以上のように、本研究は科学研究費補助金を受けて、当初目的の成果を挙げることができた。
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