研究概要 |
新規抗菌剤を目指して合成された第四級アンモニウム塩をダイマー化した化合物が従来の抗マラリア薬には無い構造を有したことから,もしこのものが抗マラリア活性を有していた場合,既存の化学療法剤とは薬剤耐性が交差しない新規な作用機構を有する新規抗マラリアを開発できる可能性が高いと考え,本研究を開始した。現在までに,本年度中に合成予定であった,mが2-10,nが2-18の化合物のうち,mについては4-8のもの,nについては8-18のもの,更にカウンターアニオンとしてはブロムイオン及び酢酸イオンを有するものの合成を完了し,抗マラリア活性の検討も終了している。本研究代表者らが既に合成し,本研究のリード化合物としている熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)に対する選択毒性580倍(P.falciparum;1.Ox10^<-8>,FM3A;5.8x10^<-6>)の強い活性を有するダイマー以上の活性を示すものは現在までのところ,見出されていない。(本研究では,EC_<50>が10^<-6>M以下の抗マラリア作用を示すか,またはFM3A細胞と比較して選択毒性が10倍以上のものを有効と判断している)。即ち,このリード化合物とアミド結合間のメチレン鎖の長さやN-アルキル鎖の長さを異にする誘導体では,選択毒性は1/20-1/100に低下していることから,アミド結合間のメチレン鎖の長さが炭素数で6,N-アルキル鎖の長さが炭素数で8のものが高い活性を発現するコンフォメーションの条件を最も満たしているように思われる。また,本化合物のカウンターアニオンをヨウ素イオンから臭素イオンに変換しても,抗マラリア活性に大きな差は認められなかった。更に,臭素イオンから酢酸イオンに変換することにより活性が高まったが,この時,化合物の水溶性も高くなっていることから,水溶性を高めることも活性の向上に関与するのではないかと考えられる。
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