研究概要 |
本研究は,天然抗炎症剤グリチルリチン(GL)とその関連する天然生理活性阻害物質の作用メカニズムを明かにする目的で,(1)GLが特異的に結合する生体内機能性因子の精製,gene productの同定および生理作用(情報伝達系と免疫系の調節作用)の解明,さらに(2)主要機能性因子の生理活性を選択的に阻害する有効天然化合物の検索などを行った.平成14年度での解析の結果,以下のことがらが明らかになった. 1.GL-affinityカラムによりリウマチ患者関節液およびウシ乳画分よりGL結合性因子(gbP,GL受容体)を精製した.アミノ酸配列の解析より,関節液から補体成分C3とC3a,そしてウシ乳成分画分からラクトフェリン(LF)とLFに結合しているFGF-binding protein (FGF-BP)などを同定した. 2.精製した各種gbP(C3,C3a,LFおよびFGF-BP)は,各種Protein kinase (CK-I,CK-II,A-kinaseやC-kinaseなど)によりリン酸化された.このリン酸化を指標にしたgbPの生理作用を阻害する抗炎症剤およびアレルギー剤のin vitroでのassay系を確立させた.このassay法を用いて解析した結果,(1)GLとGAはCK-IIおよびC-kinaseによるC3とC3aのリン酸化を選択的に阻害すること,(2)タンニンの一種Galloyl pedunculagin (GP)はA-kinaseを,そして(3)アオモリヒバから精製したMatairesinolはCK-Iによるリン酸化を選択的に阻害することを明らかにした. 3.今後の展開として,(1)gbPの生理活性に対する抗炎症剤およびアレルギー剤の選択的阻害作用;(2)gbPに直接関係する調節因子との分子間関係;そして(3)これらgbPと発症メカニズムとの生理的関係などを詳細に解析する計画である.
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