研究概要 |
本課題研究に関する解析の結果,以下の成果を得た. 1.抗炎症剤グリチルリチン(GL)結合性タンパク質(gbP)の生理作用に関する解析:補体C3から生成されるC3a(アナフィラトキシン)の生理活性に対するGLと生体内物質であるコレステロール-3-硫酸(CH-3S)の作用をin vitroで解析した.その結果,(1)C3aはGLのみならずCH-3S結合性proteinであること;(2)GLとは結合部位が異なること;さらに,(3)GL,GAおよびCH-3SはC3aの血管透過性亢進作用とレセプターへの結合を濃度依存的に阻害した. 2.CK2のリン酸化を介するPKAの活性化とその阻害物質:cAMP依存性protein kinase(PKA)の新しい活性調節を明らかにする目的で,(1)リン酸化されたPKAの活性変化;さらに(2)PKAの活性化を選択的に阻害する化合物[quercetinやgalloylpeduncula-ginなど]の作用などをin vitroで解析した.その結果,(1)CK2によるR-subunitのリン酸化によりC-subunitに対する抑制効果の減少;(2)CK2によりPKAIおよびPKAIIのリン酸化による活性化;(3)CK2によるPKAの活性化はquercetinによる選択的な阻害などを明らかにした. 3.CK1による生体内機能性因子のリン酸化を活性化する生体内物質の特徴:C3aとCH-3Sとの生理的関係についてin vitroで解析した結果,(1)C3aはGLおよびCH-3S結合性タンパク質であること;(2)CH-3S存在下でCK1によりC3a,HMG1およびC-kinaseηなどがリン酸化されること;(3)CK1によるC3aのリン酸化はGL(1-3μM)によって有意に促進されること;(4)CH-3Sと同様にsulfatideの存在下でのみCK1によって生体内機能性因子(HMG1,FGF-BP1やmyelin basic proteinなど)がリン酸化されることを明らかにした. 4.Lactoferrin(LF)結合性タンパク質の生理機能調節の解析:ウシ乳汁から調製したラクトフェリン(LF)画分には,少なくとも7種類のタンパク質(bLF結合性タンパク質:bLF-BP)の存在が明らかになった.bLF-BPの一種であるp37およびp35はFGF-BP1,p15はangiogenin-1そしてp17はlactogeninと同定された.これらの結果から,bLFはp37を含むLF-BP(p37,p35,p17やp15など)のcarrier分子としての生理的役割を演じていると推測された.
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