研究概要 |
本研究は天然資源として植物中に大量に存在しているフラボノイドを利用した創薬化学であり,天然型フラボノイドを誘導化することによって医療への積極的な利用が可能な化学予防物質を開発することを目的とする.昨年度は天然型カテキンのラジカル消去作用の増強を目的として,カテキン構造を平面に固定した平面型カテキン(1H)を合成し,ラジカル消去能と酸化的DNA傷害に対する抑制効果について検討した(J.Am.Chem.Soc.124,5952-5953,2002,Chem.Res.Toxicol.16,81-86,2003,ibd.17,26一31,2004).この平面化の反応はカテキン以外の様々なフラボノイドにも応用でき,また,アセトンの代わりに様々な置換基を有するケトンを導入することによって、フラボノイドの機能を大きく変化させることが可能である.すなわち,1)天然型フラボノイドの平面構造を固定化することによるラジカル消去能の増加,また,2)平面固定化の際、アセトンの代わりにアルキル側鎖を有したケトンを導入することによる膜透過性の向上,3)ケトンに標的部位に高親和性な置換基を導入することによる分子標的剤としての誘導化が可能である.そこで今年度は,長さの異なるアルキル側鎖(R=C_1〜C_9)を有する平面型カテキン誘導体を合成した.ルミノール法を用いてAAPH由来ペルオキシルラジカルに対するラジカル消去能を測定した結果,アルキル側鎖が長くなるに従ってラジカル消去能が増強し,R=C_3,C_4で最も強力なラジカル消去能を示した.また,さらに長くなるとラジカル消去能の低下がみられた.ヒドロキシルラジカル(Fenton反応)による酸化的DNA損傷反応に対しては,R=C_4〜C_6で特に顕著な抑制効果を示した。他の生物活性についても検討した結果,平面型カテキンには抗ウイルス作用,およびβ-グルコシダーゼ阻害作用があることがわかった。
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