前年度にひき続き、国内で食品として販売されている歯クジラ(イルカを含む)の赤身肉を収集し、総水銀とメチル水銀の測定を行なった。その結果、バンドウイルカの赤身肉から最高で98.9ppmの総水銀が検出された。メチル水銀の最高はスジイルカの26.2ppmで、これらの水銀濃度は食品としての魚介類の基準(総水銀として0.4ppm、メチル水銀として0.3ppm)を大きく上回っている。昨年(2003年)の6月厚労省は、妊婦に対して、6種類の鯨類の摂食を制限するように注意を促した。しかし、スジイルカは厚労省の調査対象に含まれておらず、当然注意の対象にもなっていない。食品として販売されている鯨類の水銀汚染調査の拡大と継続が必要である。厚労省の発表直後、FAOとWHOの合同会議(JECFA)は、メチル水銀の胎児毒性の強さを考慮して、メチル水銀の耐用量を約半分に下方変更した。妊婦に対して、より厳しい鯨類の摂食制限が必要となった。 クジラの捕獲地(宮城県、千葉県、和歌山県、沖縄県)は有名なマグロの水揚げ地でもあるが、これら地域で販売されているマグロの水銀汚染調査はこれまで行われていなかった。これらの地域で捕獲されているビンナガマグロとキハダマグロの水銀濃度を測定したところ、季節による違いと地域により違いが推定された。季節差と地域差については、今後数年間の継続調査が必要である。
|