四塩化炭素肝障害モデルは、肝炎の発症機序の研究や抗肝炎薬のスクリーニング系に古くから用いられてきた。著者らはすでに四塩化炭素をラットに投与する場合、皮下や腹腔内投与では血漿に高レベルのIL-6が誘導され、経口投与では誘導されないことを明らかにし、このIL-6は肝障害を減弱させる働きをする可能性を示してきた。本研究では、四塩化炭素が誘導するIL-6の産生組織・細胞を明らかにするとともに、この誘導の介在性因子について研究した。四塩化炭素を腹腔内に投与すると4時間をピークに腹腔内浸出液に血漿中より多いIL-6の誘導が認められたため、IL-6産生部位は腹空内と考え、腹空内組織におけるIL-6 mRNA発現をRT-PCR法により解析した。その結果IL-6 mRNAの発現は腸間膜、膨膜、横隔膜などの漿膜を含む組織では投与群で有意な上昇が認められたが、肝臓、腎臓、脾臓では投与群と対照群との間に差異が認められなかった。次に、四塩化炭素を腹空内投与した浸出液について、IL-6の産生を増強することが知られている炎症性因子を検索したところ、PGE_2とhistamineは投与後30分、IL-1αとTNFαは投与後1時間をピークに誘導された。次にこれらの因子が漿膜細胞に働いてIL-6を産生誘導するか否か調べた。漿膜細胞としては、その主構成細胞である中皮細胞を腹壁漿膜からtypsin-EDTAにより分離した。浸出液中で見いだされた因子のうちPGE_2、IL-1α、TNFαはIL-6産生を誘導したが、histamineにはこの誘導能は認められなかった。これらの結果から、四塩化炭素は腹腔細胞に起因すると考えられるPGEZ、IL-1α、TNFαを誘導し、これらを介して漿膜組織においてIL-6の産生誘導を引き起こすことが示唆される。
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