研究概要 |
本研究の特徴は、近年ヒ素発癌において重要な因子と考えられてきた無機ヒ素のメチル化代謝過程で生ずる3価ジメチルヒ素ならびに最終代謝産物であるジメチルアルシンの酸化ストレス誘発能を比較することでヒ素発癌機構の一部を明らかにすることにある。3価ジメチルヒ素の酸素分子との反応によりジメチルヒ素過酸化体(イオン)が生成し、酸化ストレスが誘発されることを前年度の研究で明らかにしてきたが(Yamanaka et al.,Toxicol.Lett.,143,145-153 (2003))、最近、この酸化ストレス誘発にヒドロキシラジカルが関与する可能性も報告されている。そこで、今年度は、3価ジメチルヒ素と酸素分子の反応から生ずるこれら両活性種の酸化ストレスへの寄与を明らかにすることを目的とした。その結果、3価時メチルヒ素による8-oxodGまたはチミングリコールなどの核酸塩基酸化体の生成機構に関して、ヒドロキシラジカルよりもむしろジメチルヒ素過酸化体(イオン)に起因する可能性が示唆された。また、マウス末梢血を用いた小核試験から、無機ヒ素の主要代謝物であるジメチルアルシン酸はそれ自身には小核形成能は無く、その還元代謝過程で生ずる3価ジメチルヒ素ならびにジメチルアルシンに起因する可能性を明らかにした。さらに、詳細な検討を加えた結果、3価ジメチルヒ素にも小核形成能は無く、さらなる還元代謝物であるジメチルアルシンが酸素分子と反応し生ずるジメチルヒ素フリーラジカルにより小核形成が誘発される可能性を明らかにした。
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