今年度は過酸化物・ヘム化合物複合体の関与による、神経毒性を有する統合失調症治療薬ハロペリドールの(HP)由来カチオン性活性代謝物(HPP^+)の生成反応系について、以下の項目について検討した。 カチオン性代謝物として、HP由来HPP^+、HPの脱水化合物であるHPTP由来HPP^+およびMPTP由来MPP^+を選び、その各生成反応を測定した。 (1)ヘモグロビン・過酸化物(過酸化水素とクメンヒドロペルオキシド)によるカチオン性代謝物の生成反応:HP、HPTPおよびMPTPはいずれもphenylpyridine化合構造を有しており、ヘモグロビン・過酸化物によるこれら化合物のカチオン性代謝物生成活性を比較した。その結果、過酸化物の種類により、カチオン性代謝物生成が異なることを明らかにした。 (2)ヘム酵素標品によるカチオン性代謝物の生成反応:ヘム鉄含有酵素としてミエロペルオキシダーゼ、ホースラディシュペルオキシダーゼおよびカタラーゼを用いて検討したその結果、いずれの酵素でも過酸化物との組合せにより、カチオン性代謝物生成が認められた。 以上の結果より、ヘム鉄含有タンパク質と過酸化物との複合体により、phenylpyridine化学構造を有するものからはカチオン性活性代謝物が生成することを明らかにした。脳内過酸化物の加齢による亢進が予測され、高齢者では、神経毒性を有するカチオン性代謝物生成反応がより多く進行することが示唆された。
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