食料の量的確保および質的な向上を目的として、除草剤耐性大豆などの遺伝子組換え食品が開発された。しかし、特定の微生物由来遺伝子産物を含有する遺伝子組換え食品の安全性に関しては、いまだ十分には明らかにされていない。経口トレランスは経口的に摂取される抗原に対して免疫寛容が誘導される現象で、食物アレルギー阻止に重要な役割を果たしている。本研究においては除草剤耐性の遺伝子組換え大豆の免疫系経口トレランスに与える影響について検討した。 [方法]除草剤耐性の遺伝子組換え大豆を含む混合試料を一定期間マウスに投与した。経口トレランス誘導のため、抗原として卵白アルブミン(OVA)を用い、OVA免疫前に同抗原を経口投与した。免疫後OVAに対する血清抗体IgGおよびin vitroでの抗原特異的脾臓細胞増殖反応を測定した。Th1反応指標として抗OVAIgG2a、IFN-γ、Th2反応指標として抗OVAIgG1、IL-10を測定した。 [結果]OVA経口投与によるリンパ球増殖反応抑制においては遣伝子組換え大豆投与群と対照群との間に差は認められなかった。しかし、抗OVAIgG、IgG2a、IgG1抗体産生及びIFN-γ、IL-10分泌抑制は遺伝子組換え大豆投与によってさらに促進される傾向がみられた。 [考察]遺伝子組換え大豆は経口トレランスを促進する可能性が示された。OVA経口投与によるTh1およびTh2免疫抑制は共に増強される傾向が見られることから、本遺伝子組換え食品は少なくとも食物アレルギー誘導に対して悪影響を及ぼさないと思われる。
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