工場排水の活性汚泥処理におけるバルキング防止剤としての米ヌカの効果並びにその機構の解明 1999年11月から食品工場(西宮市、モヤシ類を製造する工場)における活性汚泥法による排水処理施設に米ヌカを添加して実験を続行中である。米ヌカを投入する前のSVI値(汚泥の沈降性を示す値で、50〜150であることが好ましく、バルキング状態では、200以上となる。)が約150であったのに対し、添加後のSVI値は70付近となり、またCOD値も平均18から11mg/Lと有意に低下し、大きな改善が見られ、活性汚泥処理における米ヌカ添加の効果が観察された。そこで、今年度はその効果の確認並びに機構の解明を行った。標準活性汚泥法処理試験装置(宮本製作所製のAS-5、曝気槽5L、沈殿槽2.4L)を用いて実験室規模でバルキング状態を作成し検討した。バルキング状態はSVIが200以上となり、かつ顕微鏡により大量の糸状性細菌が観察された状態でバルキングが起こったと判断した。バルキング状態と判断した日より2日に1度の割合で、米ぬか1gを曝気槽に5回添加した.米ぬか添加によりSVIは300から90まで低下し、COD値、BOD値も減少した。次ぎに米ヌカの何が有効に作用しているかを明らかにした。フィチン酸は活性汚泥のフロックの形成に重要な役割を果たしていること、また米ヌカにはフィチン酸が数%の割合で含まれること等を考慮してフィチン酸に注目して実験を行った。バルキング状態と判断した日より2日に1度の割合で、50%フィチン酸溶液0.1mL(この量は米ぬか1gに相当する量)を曝気槽に5回添加した。フィチン酸の添加によりCOD値、BOD値は減少した。顕微鏡観察によりフィチン酸添加3日後では、糸状性細菌の殆どが消失し、添加6日後には、活性汚泥の良好な時に出現する代表的な原生動物Zoothamniumが観察された。これらの結果より米ヌカによるバルキングの抑制の一因にフィチン酸の関与が推定された。これらの成果は第52回日本薬学会近畿支部総会(2002.10.19.大阪)並びに第37回日本水環境学会年会(2003.3.4.熊本)で発表した。
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