研究概要 |
1.本年度は、まず非ダイオキシン類の1つであるCB118(2,4,5,3',4'-五塩素化ビフェニル)につき、ラット、ハムスターおよびモルモット肝ミクロゾームによるin vitro代謝について検討した。その結果、モルモット肝ではラットあるいはハムスター肝の10倍以上の強い代謝活性を示し、1種類の代謝物M-1が生成された。この構造は、別途合成した2-水酸化(OH)-3,4,5,3',4'-五塩素化ビフェニルとGCの保持時間およびマスフラグメンテーションがほぼ完全に一致した。なお、3-OH体はごくわずか遅れて検出された。さらに、有名なチトクロムP450(P450)誘導剤であるフェノバルビタール(PB)を前処理したモルモットではM-1の生成が著しく増加した。次に、モルモット肝でのP450分子種を明らかにするため、モルモッPB誘導性CYP2B18に対する抗体を添加したところ、M-1の生成はほぼ完全に阻害された。この結果から、モルモット肝でのCB118の代謝にはCYP2B18が強く関与することが明らかとなった。これまでに2,4,5-三塩素置換PCBであるCB138およびCB153の代謝を報告してきたが、モルモット肝では全く同じ水酸化機構、すなわち2,3-エポキシドを経由し、2位の塩素のNIH転位を伴った機構で進行しているものと考えられる。 2.哺乳類全胚培養法は一般に培養液として100%ラット血清を用いるため、血清採取のために使用する動物数がとても多くなり、in vivo試験と同等数必要となる。これは経費および動物愛護の面から考えた場合、望ましいとは言えない。また血清中にはアルブミン等の薬物結合タンパク質が存在することから、化合物のより詳細なメカニズムの検討を行うためには、無血清培養液による培養が望ましい。本年度は、これらのことを踏まえて全胚培養法に用いる培養液の検討を行うため、大型動物(ブタ、ウシ)の血清、ならびに無血清培養液にようラット全胚培養を試みた。その結果、独自で調整を行った無血清培養液(AKY-020)において、ラット胎齢12.5日目からの胎児培養において、培養24時間まではラット血清と同様に培養が行えることがわかった。
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