研究概要 |
1.昨年度2,4,5-三塩素置換PCBの1つであるCB187のin vitro代謝を調べたところ、モルモット肝で代謝活性が高く、3種類の代謝物(4'-OH-hexaCB,4'-OH,4-OH)が生成されることを明らかにした。本年度は、モルモットにおけるCB187代謝物の血中および糞中への分布を調べた。薬物(PB,MC)処理したHartley系モルモットに本PCB(80μmol/kg)を単同腹腔内投与した。投与後、4日間の糞および4日目の血液を採取した。血清中代謝物は酸性下、CHCl_3-CH_3OH(2:1)およびn-ヘキサンで抽出後、メチル化し、GC-ECDおよびGC-MSで分析した。また、糞中代謝物はアセトン-n-ヘキサン(2:1)で24時間連続抽出した後、メチル化し、以下同様に分析した。未処理の場合、血中の主な代謝物は4'-OHおよび4-OH体であり、その生成量は0.6および0.4nmol/mlであった。また、4'-OH-hexaCBは生成されたものの痕跡程度であった。PB前処理の場合、4'-OH体は未処理の1.5倍に、また、4-OH体も1.2倍に増加した。MC前処理の場合、両者はそれぞれ未処理の70%および32%へと激減した。しかし、4'-OH-hexaCBはいずれの前処理でも全く影響されなかった。一方、糞中において、未処理では、4'-OH-hexaCBと4'-OH体が検出された。生成量は0.5および3.3nmol/g乾燥重量であった。また、PBおよびMC前処理では、4'-OH-hexaCBはそれぞれ未処理の76および24%へ、4'-OH体は未処理の89および53%へと減少した。なお、4-OH体は検出されなかった。以上のことから、3種の代謝物のうち、4-OH体は選択的に血中へ、4'-OH-hexaCBは糞中へ、また、4'-OH体は血中と糞中の両方へと分布することが示唆された。 2.WHOによると、CB118は、CB77やCB126等のダイオキシン類と同様に、毒性等価係数(0.0001)が設定されているただ1つの2,4,5-三塩素置換PCBであるが、他の2,4,5-三塩素置換PCBには毒性等価係数が無く、毒性評価の対象外となっている。本年度はPCBの胎児毒性を知るために、CB52、CB77およびCB118の胎児毒性、すなわち培養中の胎児心拍動数および培養終了時の胎児の形態形成を調べた。ラット胎齢11.5日目の胎児を母獣より取り出し、48時間培養を行った。培養開始2時間後に、各PCB異性体を培養液中に10あるいは100ppmになるよう添加した。対照群にはDMSOのみを添加した。その結果、培養中の胎児心拍動数において、すべての処理群は対照群と全く同じであった。培養48時間後、CB52(10ppm)処理群では後肢に浮腫が認められたのみで、また100ppmにおいても曲尾などの異常のみであった。一方、CB118処理群では10ppmにおいては顔面部の出血や短尾が観察されたのみであったが、100ppmでは、前頭部発育遅延、上顎の低形成、口唇裂さらに全身性の発育遅延が確認された。またCB77(10ppm)処理群でも上顎の低形成や口唇裂が誘発され、100ppmではさらに全身性の出血なども認められた。以上の結果から、3種類のPCB異性体のラット胎児への毒性の強さは、濃度依存的であり、またWHOの毒性評価と一致して、CB77>CB118>CB52であることが明らかとなった。
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