1)増殖に関連するネズミ核タンパク質NP95の発現は、BALB/3T3細胞を用いる2段階形質転換試験のプロモーション期にTPA、オカダ酸及びオルトバナジン酸塩によって共通して上昇し、形質転換促進に関連する可能性があることを以前報告した[平成10-12年度科学研究費補助金(基盤研究C)研究成果報告書]。今回、NP95の発現は、形質転換したすべてのBALB/3T3細胞株で上昇していることを明らかにし、NP95の発現上昇は、形質転換の維持にも関与している可能性があることを示した。また、NP95の発現上昇が発がんプロモーターに特異的であるかどうかを検証するために典型的発がん物質によるNP95の発現変化を調べた。形質転換試験でイニシエーターとしてのみ作用する低濃度ではNP95の発現上昇は認められなかったが、完全発がん物質として作用する高濃度の3-methylcholanthrene(MCA)では弱い発現上昇があった。発がんの2段階説では「完全発がん物質は、イニシエーション活性とプロモーション活性の両方をもっている」と説明されており、高濃度ではMCAが持つプロモーション活性によってNP95の発現上昇が誘導されたと考られた。 2)2段階形質転換試験におけるプロモーション処理に近い条件で細胞をTPA、オカダ酸、オルトバナジン酸塩またはp-ノニルフェノールに暴露し、暴露開始7、24時間及び7日後におけるmRNA発現変化を調べた。4つのプロモーターに共通する発現変化は、現在までのところ認められていないが、TPAとオカダ酸に共通した発現変化を示す遺伝子としてArgininosuccinate synthetase 1 (Ass1)とNCBIのEST Divisionに収載されているもの(Accession No.:AA168524)を見出した。それらの発現変化は、まずTPAによって顕著になり遅れてオカダ酸で顕著になった。
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