研究概要 |
[目的]BALB/3T3細胞を用いる形質転換試験は,変異原性を有するがん原性物質だけでなく,非変異・がん原性物質を形質転換促進物質として検出することができる.TPA,オカダ酸(OA),オルトバナジン酸塩(VA)及びノニルフェノール(NP)は,形質転換を顕著に促進する.非変異・がん原性物質の作用機序の解明と遺伝子発現変化を指標とした非変異・がん原性物質短期検索法の開発を目的として,細胞に誘発される遺伝子発現変化を調べた.[方法]2段階形質転換試験におけるプロモーション処理の条件で細胞をTPA,OA,VAまたはNPで7時間,24時間及び7日間処理してRNAを抽出した.蛍光mRNAディファレンシャルディスプレイ(DD)法により発現に差があるmRNAを検索し,定量的RT-PCRにより差発現を確認した.[結果]TPAとOAによって発現が上昇する遺伝子としてLy6e (lymphocyte antigen 6 complex, locus E), Ass1 (argininosuccinate synthetase1)とNudt9 [nudix (nucleoside diphosphate linked moiety X)-type motif 9]を,TPAとOAによって発現が低下する遺伝子としてA1428795 (expressed sequence A1428795), Thbs1 (thrombospondin 1)及びGenBank EST DivisionのBY594155を見出した.OAで発現が上昇する遺伝子としてLgals3bp (lectin, galactoside-binding, soluble, 3 binding protein)とPlat (plasminogen activator, tissue)を,NPで発現が上昇する遺伝子としてSsb (Sjogren syndrome antigen B)とSST3 (secreted protein SST3)を見出した.また,TPAで発現が低下する遺伝子としてSparc (secreted acidic cysteine rich glycoprotein)を,OAで発現が低下する遺伝子としてRpl3 (ribosomal protein L3)を,NPで発現が低下する遺伝子としてND1 (NADH dehydrogenase subunit 1)を見出した.今回用いた実験条件下では,現在までのところ4物質すべてに共通した差発現を示す遺伝子は見つかっていない.
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