本研究の目的は、過去10年間の大阪市内における救急隊員によるすべての救急搬送症例について、重症度、時間的因子、患者性別、発生場所、発生時間帯、傷病種別、事故種別を調査し、大阪市における救急搬送の時間的、空間的特性ならびに重症度を解析することである。さらに時間的因子を重症度、発生時間帯、発生場所(町単位)などと比較することにより、プレホスピタルケアの質について考察する。また、過去10年間のデータを分析し、傷病構造、年齢分布、重症度、救急出場需要の経時的な変化を把握し、今後の救急車最適配置、消防機関、医療機関のより合理的な連携を検討し、地域医療に貢献することを目的とする。 平成14年度は平成12年度の大阪市における救急搬送患者(約15万人)の重症度(意識、脈拍数、収縮期血圧、呼吸数より算出する)を調査したが、平成15年度は逆に軽症患者について検討した。全症例のうち軽症患者の割合は57%で、45-54歳の男性では70%を越えていた。女性の重症度は男性よりも高かった。また最近10年間で軽症者の割合に変化はなかった。 軽症患者は男女ともに打撲、捻挫、脱臼などの外傷が30%を含めていたが、内因性疾患は様々であった。急性アルコール中毒の軽症例は男性が女性の2倍以上を占めた。
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