生命情報である遺伝子の解明は、生命そのものに深く関わってくる。遺伝子は、ひとの生命の根幹をなす。現在の先端医療といわれる医療の恩恵を受けつつ、生命の尊重と人々の安全を守り、人権を擁護していくことを具体的に考えていくことが急務となっている。特に、遺伝医療においては、患者だけでなく、遺伝子を共有する家族の援助が重要である。 本年度は、いくつかの遺伝に関するセミナーや文献等多方面から、科学の立場の遺伝に関する情報を集めた。一方で、患者の擁護を主眼にして検索を行った。患者の権利やアドボカシーに関する文献検索や海外での制定を比較した。精神医療において権利擁護組織が育ってきた。この理由としては、精神医療において患者の権利、とりわけ患者の自己決定権が重要視されるようになってきたことにある。そこで、司法精神医療視察団の一因として、本年度は、イギリスとオランダを訪れ、患者の権利法起草者からの講義や司法精神医療を中心とした視察を行った。欧州でも、精神障害者を中心としてスタートしたが、医療を含む多くの事に共通する問題が明らかになったという報告を受けた。 遺伝子が明らかになっても、未だ治療法が確立されていない疾患もある。遺伝子診断や治療を受けるか否かという選択は患者が成す。しかし、遺伝情報は未だ、不確かなものもある。このような状況で患者が選択するためには、臨床では、患者が自分の感情を表出でき、意見を言えるという受療環境を整えておく必要である。次年度は、この具体策に向けて、調査研究を継続する。
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