現在の先端医療といわれる医療の恩恵を受けつつ、生命の尊重と人々の安全を守り、人権を擁護していく視点を具体的に考えていくことが急務になっている。特に遺伝医療においては、患者だけでなく、遺伝子を共有する家族の援助も重要となる。 遺伝医療における課題は、過去の疾患史においても共通している。過去にも、疾患に関する社会的現象に対する反省がいくつか報告されている。本年度は、患者の権利にたちかえり、人々の擁護や、患者の権利に関するまとめをおこなった。人として生きることは、自己の尊厳と自己の人格の自由な発展がなされることである。遺伝に関する知見が次々と明らかになり、患者参加型および契約医療への転換がなされている現在、医療を提供する人々と、患者相互の個の尊重がなされ、障害をもつ人々との共生のための医療環境の整備は重要である。 このためには、患者と最も接することの多い看護師を対象として、患者の人権擁護に関する具体的な方法を構築することが必要である。そこで、本年度は、看護師らに調査を行った。その結果、遺伝ということについては、具体的には考えられず、怖いという気持ちが前にでるということが明らかになった。しかしながら、命を育み、生命と生活に携わる職種として、遺伝医療やその他の医療においても人々の尊厳を守るという意識の重要性が再認識された。 これらの成果をふまえて、最終年度となる来年度は、患者擁護、遺伝医療に関する社会的課題を中心とした文献等をまとめるとともに、患者側の意見を加えて報告をまとめていく。
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