遺伝に関する知見が次々と明らかになり、患者参加型および契約医療への転換がなされている現在は、先端医療といわれる医療の恩恵を受けつつ、生命の尊重と人々の安全を守り、人権を擁護していく視点を具体的に考えていくことが急務になっている。 医療を提供する人々と、患者相互の個の尊重がなされ、障害をもつ人々との共生のためには、医療環境の整備は重要である。特に遺伝医療においては、患者だけでなく、遺伝子を共有する家族の援助も重要となる。障害をもつ人々や、遺伝医療を支える社会環境の整備のためには、患者の最も身近に接することの多い看護者を対象とした遺伝に関する基本知識の再確認と患者の人権擁護に関する示唆を深めることが必須であると考え研究を行った。 1)人として生きることは、自己の尊厳と自己の人格の自由な発展がなされることであり、それが保障される一人一人の力を合わせた環境づくりが必要である。 2)遺伝医療では、(1)個人の命、家族の命、地球生命号としての命、(2)個人の価値、家族の価値、社会の価値、といった何か一つを選択することができないことが多い。 3)不確実な情報の下で、患者は遺伝医療に関する意思決定を求められることが増えていく。 4)民族、人種といった特徴は、厳しい自然環境への適応が積み重なった貴重なものである。遺伝医療においては、精度の高い知見を明らかにするのに必要な情報である。これらは、遺伝医療には不可欠な要因であるが、個人のプライバシーとしての位置づけも高い。 今後は、(1)職場環境において医療従事者自身も安全であることが基盤となる。(2)どのように遺伝情報を伝えるか、遺伝情報に関する情報の取扱いや、遺伝情報と情報行動についての今後の研究が必要であると思われる。
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