今年度は、研究のコアになる資料を確保・運搬し、複写を取って整理し、基本的なデータを入力する作業を行った。まず、資料が保存されている東京都北区の小峰研究所から、段ボール130箱ほどの資料を慶応大学まで運搬した。そのうち、もっともヴォリュームが大きい王子脳病院・小峰病院の「病状日誌」、約4000件については、患者情報の部分をすべてコピーするという基本的な作業を終えた。また、すでに入力を進めていた「患者名簿」については、入力したエクセルデータをデータベースに移行するという作業を終えることができた。さらに、さまざまな病院・患者関係の雑多な資料についても、閲覧と分類を終了した。これで、研究の基礎になるデータについては、およそ半分ほどの作業を終えたことになる。この基礎的な作業と平行して、すでに入力されたデータをもとに分析にも着手した。分析のひとつの大きな成果は、入院患者の性比に関する現象である。年によって若干のばらつきはあるが、患者の男女比はだいたい2:1で、圧倒的に男性が多い。それぱかりでなく、おのおのの年齢構成を見たときに、男性患者では20歳から45歳までにあいだに高い丘があるのに対し、女性患者は15歳から20歳という若年層にピークがあり、それ以降は急速に患者数が減少する、というパターンを示す。現在、この数量的なデータに、「病状日誌」の質的なデータを加味して分析し、家庭における精神病患者のケアと、精神病院への入院の「閾値」の問題を検討している。
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