もやもや病は、両側性内頸動脈の終末部の狭窄症または閉塞と大脳基底部の血管の異常ネットワークによって特徴づけられる。アジア、特に日本では、もやもや病の発生率が高い。症例全体の約10%に家族歴が見られることから、遺伝要因が発症に関わっていると考えられ、家族研究からラムダSが40以上と遺伝の影響の強い多因子遺伝と推測されている。 これまでの連鎖研究により疾患感受性座位が染色体3p、6q、17qにあることが示されていた。しかし、これらは多因子遺伝病の解析に適切である罹患同胞対法を用いた全ゲノム連鎖解析を行った結果ではなかった。そこで、本研究では、罹患同胞対法を用いて、全ゲノム連鎖解析を行い、もやもや病の病因遺伝子の位置を明らかにすることを目的とした。 罹患同胞対の12家系を対象に全染色体上に約10cM間隔で存在する391のマイクロサテライトマーカーを用いた。連鎖の可能性が得られた領域に関しては、さらにマイクロサテライトマーカーを追加し、デンスマッピングを行った。その結果、計428のマイクロサテライト・マーカーを用いた。統計処理にはGeneHunter ver2を用い、TDTにはSIB-PAIR programを用いた。 全ゲノムスクリーニングの結果、8番、12番染色体においてMLS (maximum lod score)が2を超える領域を認めた。さらに8番染色体に17マーカー、12番染色体に20マーカーを追加したところ、8番染色体では一つのマーカーでMLSが3.6、12番染色体でも一つのマーカーでMLSが2.3となり、8q22において有意な連鎖が認められた。 これらの領域にモヤモヤ病の発症に関わる遺伝子が存在する可能性が示唆されたことから、8番染色体の連鎖の示唆された領域について、41のSNPを用いた関連解析を行った。その結果、ある遺伝子を中心とした領域で関連が強く見られ、候補領域が絞られた。しかし、家系数が少ないため、疾患感受性遺伝子を特定するには至らなかった。
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