本研究は、QTL(Quantitative trait loci)連鎖解析法を用いて全ゲノムレベルでLDLおよびHDLコレステロール値の個体差の決定に関わる遺伝子が存在する遺伝子領域を検索することにより、高コレステロール血症および低HDLコレステロール血症の感受性遺伝子を同定することを目的としておこなった。 高コレステロール血症の児童(血清総コレステロール値>200mg/dl)を発端者とする43家系172名を1st Panelとして、352個のマイクロサテライトマーカーとLDLおよびHDLコレステロール値との連鎖をHaseman-Elston法を用いたQTL連鎖解析法により分析した。その結果、LDLコレステロール値は2番染色体(D2S335)、3番染色体(D3S1580)、15番染色体(D15S120)において、HDLコレステロール値は6番染色体(D6S308)においてLod値が1.4以上となり連鎖の可能性が示唆された。これらの連鎖を確認するために、新たな32家系138名の試料を2nd PanelとしてQTL連鎖解析をおこなったが、連鎖が確認できたのはLDLコレステロール値と15番染色体(D15S120)のみであった。D15S120近傍には脂質代謝に関連する既知の遺伝子はマップされていないので、この遺伝子領域に存在する新たな脂質代謝関連遺伝子を同定する必要がある。 一方、健康な小児を対象とした候補遺伝子分析の結果、Endothelial Lipase遺伝子の-384A>C多型、2237G>A多型およびABCA1遺伝子のK219R多型とHDLコレステロール値の間に関連が検出された。このことから、Endothelial Lipase遺伝子ならびにABCA1遺伝子の変異が低HDL血症の感受性遺伝子の一つとなっている可能性が示唆された。
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