染色体サブテロメア領域は通常のG-バンド分染法では白く抜けるバンドで通常構造異常を同定することは困難である。そこで同領域を詳しく調査するためのサブテロメア特異的プローブが開発され、FISHベースで解析がなされている。我々はこれらのプローブをマイクロアレースライド上にスポットし、同領域の構造異常を1度に網羅的に解析するシステムを開発した。このシステムを用いて、陽性コントロールとして4pサブテロメア領域の欠失が知られている症候群(Wolf-Hirschhorn症候群)5例を解析したところ、全例において4pサブテロメア欠失を確認した。さらに2例においてこれまで同定されていなかった染色体異常を合わせて同定した。そのうち1例は、父親に存在した均衡型のサブテロメア領域の相互転座由来であった。このように我々の開発したシステムの有効性を確認後、特発性精神遅滞患者69例を解析したところ4例(5.8%)において、サブテロメア領域の構造異常を同定することが可能であった。特発性精神遅滞の約5-6%にサブテロメア異常が認められるという報告が欧米を中心になされているが、今回の結果で、本邦の精神遅滞におけるサブテロメア構造異常の頻度も欧米と差がないことが判った。また本システムでゲノムコピー数の異常を効率的に同定することが可能であることが明らかとなったので、今後は本システムを、多数のプローブを用いた全ゲノム解析用マイクロアレーに応用し自然流産検体を解析する予定である。
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