我々はヒトRAD18遺伝子(hRAD18)を単離し、その機能を明らかにしてきた。RAD18遺伝子の機能が不全になると、複製後修復が機能しなくなることとゲノムが不安定になることを検証するため、マウスRad18遺伝子を破壊したES細胞を調製した。この細胞は、紫外線、メチル化剤、架橋化剤などの種々のDNA損傷に対して高い感受性を示した。DNA損傷後の新規のDNA複製が抑制されていたことから、複製後修復が欠損していることがわかった。RAD18ノックアウト細胞の自然突然変異率は、野生型細胞に比べてわずかな増加し、DNA損傷誘発処理後の誘発変異は逆に抑制されていた。また、RAD18ノックアウト細胞では姉妹染色体分体間組換え(SCE)が約3倍増加していた。外来遺伝子が安定にゲノムに保持され発現する効率は約20倍増加しており、部位特異的組換え頻度は約40倍の値を示した。このため、RAD18遺伝子は、非正統的組換えを抑制することによりゲノムの安定性の維持に寄与していると結論づけた。RAD18ノックアウトマウスの作製にも成功し、表現型を解析している。抗体を用いた染色試験により、細胞がDNA損傷を受けるとRAD18蛋白は核内に均一に拡散した後にDNA損傷部位に蓄積していくことがわかった。Rad6-Rad18によるユビキチン結合制御とDNA修復および発がん抑制がどのように結びつくのか明らかにするため、Rad18によりユビキチン化を受けると思われる基質としてPCNA等に着目し、その機構と意義について研究を進めてゆく予定である。
|