研究概要 |
筋AMPD欠損症はAMPD1遺伝子の変異により生じ、代謝性ミオパシーを来すことが知られるが、コーカシア人で極めて高頻度に同一の変異(C34T)の存在することが知られている。これまでにAMPD1遺伝子全域にわたる変異多型スクリーニングを行い、新規多型ならびに変異を見いだし、アミノ酸置換を来す新規変異について発現タンパクの酵素学的検討を行い、新たなAMPD1機能不全を明らかにした。多型、変異スクリーニングは多色蛍光PCR-SSCP法ならびにdHPLC法にて行い、直接塩基配列決定にて確認した。今回、日本人、ヨーロッパ系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人およびドイツ人ミオパシー患者を解析し、AMPD1遺伝子の多型について比較検討した。多数の多型とともに2種の新たなミスセンス変異(A860T,G930T)が検出され、このうちミオパチー患者の中にはA860T変異とC34Tとの複合ヘテロ接合体が複数例存在し、A860T変異ホモ接合体も確認され、欧系人一般集団にもA860T変異が存在していた。次いで、これら新規変異AMPD1(K287I,M310I)について大腸菌発現系により塩基置換に対応するAMPDペプチドタンパクを発現させ、得られた酵素の酵素学的検討を行った。発現した変異酵素は両者とも大腸菌における発現効率は野生型と同様であったが、触媒活性は低く、基質親和性は不良であることが示された。また、多型の連鎖不平衡の状況について検討を行い、個人別ハプロタイプ推定とLA-PCRによるSNP決定により、AMPD1遺伝子についてSNP多型のハプロタイプの全容を明らかにすることができた。これらの情報をもとに、コーカシア人で頻度の高い変異を含むSNP多型ハプロタイプの起源の考察が可能となった。以上より、AMPD1変異について新たな知見が得られた。
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