簡便かつ高感度LTE4測定法によるアトピー性皮膚炎診断法の開発

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14572148
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 菱沼 隆則 東北大学, 医学部附属病院, 助教授 (20199003)
• 研究分担者: 冨岡 佳久 東北大学, 医学部附属病院, 助手 (00282062) ; 相場 節也 東北大学, 大学院・医学科研究科, 助教授 (80159269)
• キーワード: LC / MS / アトピー / ロイコトリエン / LTE_4 / アトピー性皮膚炎 / LC / MS-MS / 診断法 / 微量定量

研究概要

アトピー性皮膚炎は、増悪、寛解を繰り返す、そう痒のある湿疹を主病変とするアレルギー性疾患であり、その治療にはステロイド剤、抗アレルギー剤や抗菌剤などが用いられるが、寛解例は乏しい。現在診断のマーカーとしてはIgEやCRP等が知られるものの、病態変化に即応する変化は認められておらず、アトピー性皮膚炎の明確な病態及び治療効果を反映するマーカーの開発は急務の問題となっている。
ロイコトリエン(LT)は炎症性疾患のメディエーターとして知られるが、産生量が極微量で、これまで用いられてきた免疫測定法が固相抽出による試料の濃縮操作及びHPLCによる精製を必要とするなど煩雑で長時間を要したため、臨床への応用はなされていなかった。そこで液体クロマトグラフィー/タンデムマススペクトロメトリー(LC/MS-MS)を用いる簡便かつ迅速な尿中LTE_4の超微量定量法を新規に開発した。本法は10pg-10ngの測定が可能で、検体採取後2時間以内で結果を得ることができるという利点を有する方法である。次に、アトピー性皮膚炎患者の尿中LTE_4測定に応用した。その結果、アトピー患者群において有意に高いLT産生能とアトピーとの関連性が示唆されているIgEとの高い相関性を見いだし、LTのアトピーの病態マーカーとしての有用性を示唆した。また、各種薬剤による治療により、LT産生量の減少傾向を示し、寛解例では有意に低い値を示しした。
今後は、より多検体による検討を行うとともに、乾癬など他の患者試料の検体についても同様に検討し、LTE4変動の疾患特異性を明らかにし、疾患に重症度との関連性や治療薬剤との関連性について精査し、その有用性を明らかにするとともに、実際の治療プロトコールへの組み入れを行う予定である。

研究成果

• [文献書誌] Suzuki, N.: "Determination of urinary 12(S)-hydroxyeicosatetraenoic acid by liquid chromatography/tandem mass spectrometry with column-switching technique : sex difference in healthy volunteers and patients with diabetes mellitus"J Chromatogr B. 783. 383-389 (2003)
• [文献書誌] Nakamura, H.: "Difference in urinary 11-dehydro TXB_2 and LTE_4 excretion in patients with rheumatoid arthritis"Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 65. 301-306 (2002)
• [文献書誌] Takabatake, M.: "Simultaneous quantification of prostaglandins in human synovial cell-cultured medium using liquid chromatography/tandem mass spectrometry"Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 67. 51-56 (2002)
• [文献書誌] Tsukamoto, H.: "Simultaneous quantification of prostaglandins, isoprostane and thromboxane in cell-cultured medium using gas chromatography-mass spectrometry"J Chromatogr B. 774. 205-214 (2002)
• [文献書誌] Nozaki, S.: "Design, production, and characterization of recombinant neocarzinostatin apoprotein in Escherichia coli"J Biochem (Tokyo). 131. 729-738 (2002)
• [文献書誌] Yamazaki, T.: "Effect of peroxisome proliferator-activated receptor gamma on thromboxane A(2) and prostaglandin E(2) production in macrophage cell lines"Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 67. 383-389 (2002)