研究概要 |
癌関連抗原CD98に対するヒト型リコンビナントFab (rFab)の単離とその臨床応用を目的として本研究を行った。MOLTリンパ腫患者骨髄細胞からヒトIgG1,κ抗体遺伝子ライブラリー(1.3x10^7cfu)を構築した。本ライブラリーに対してHeLaS_3細胞抽出液をCD98抗原ソースとした5ラウンドのパニングを行ったが、ファージタイターの上昇は13倍に止まり、CD98陽性rFabクローンは全く得られなかった。そこで、CD98陽性浮遊系HeLa生細胞(sHeLa)を用いたパニングについて検討した。5ラウンドのパニングによりファージタイターは240倍に上昇した。sHeLaと反応するrFabクローンを間接蛍光抗体法によりスクリーニングしたところ、40クローン中39クローンが陽性であった。陽性クローンDNAのBstNIフィンガープリントはすべて同一であった。得られた単一クローン(AHSA (anti-HeLa surface antigen) rFab)の分子構造及び反応特異性について詳細に検討した。AHSArFabは、H鎖、L鎖ともに由来するジャームライン配列と高い相同性を示した。AHSArFabは、sHeLaと反応したが、付着系HeLaとは反応せず、その他のヒトあるいはマウス由来細胞株とも反応しなかった。AHSArFabの反応性は、長期培養によるsHeLaのクラスタ形成能の低下とパラレルに減弱した。また、培養系へのAHSArFabの添加により、sHeLaのクラスタ形成は、濃度依存的に阻害された。以上の結果よりAHSArFabは、クラスタ形成に関連する細胞表面抗原を認識していることが示唆された。
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