筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の運動神経変性疾患は神経細胞の変性死によっておきる難病である。我々はこの治療法の開発の可能性を神経栄養因子(neurotrophic factor:NTF)に求め、毛様体神経栄養因子(ciliary neurotrophic factor:CNTF)を用いて、Cashmanらによって樹立されたマウスの神経芽細胞腫と脊髄の運動神経のハイブリドーマNSC-34に対する生存延長作用について検討してきた。その結果無血清下で培養したNSC-34細胞はCNTFにより有意にその生存が延長された。低分子の化合物にこの運動神経様細胞の成長を促進するものがないか調べる目的で、インドで「知能長寿薬」として用いられているツボクサの配糖体に着目した。またイチョウやカシュウナッツの成分についても検討した。これらの成分は血清存在下でNSC34細胞の増殖を促進した。運動神経疾患の発症には細胞死のみならず神経伝達機能の阻害を起こす自己免疫疾患があり、自己抗体のターゲットとしてイオンチャネルの可能性が考えられる。NSC-34細胞におけるイオンチャネルの発現を、K^+チャネルについて検討した。電位依存性K^+チャネルはファミリーを形成しており、Kv1.1からKv1.6までの抗体を用いてNSC-34細胞のライセートのウエスタンブロットと細胞の免疫染色を行った。その結果これら6種のK^+チャネルがNSC-34細胞に発現していることが明らかとなった。RT-PCRによるKv1.2のmRNAの発現について検討した。NSC-34細胞よりtotal RNAを調製し、Kv1.1〜Kv1.6に特異的なprimerを作製し、RT-PCRを行ったところ、これら6種のmRNAが検出された。またパッチクランプ法によりNSC-34細胞のK^+電流が測定された。ウエスタンブロットにより個々のチャネルの定量を行った結果、Kv1.4が最も多く含まれていることが明らかとなった。
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