平成15年度は結核菌とマクロファージの相互作用の検討を行った。 1)培養マクロファージへの結核感染実験 固形培地(7H10)にて培養した結核菌細胞株(H37Rv)を培養マクロファージに添加し、感染の起こる条件を検討した。抗酸菌染色により感染を確認できた。 2)抗CD36抗体の結核感染成立への影響の検討 感染実験を抗CD36抗体存在下で行ったところ、感染は非存在条件と同様に観察され、CD36以外の経路で感染が起こることが示唆された。 3)CD36欠損者のマクロファージに対する感染実験 CD36欠損者から採取した単球由来マクロファージに対して、感染実験を行ったところ、正常マクロファージと同様の感染を認めた。 4)共焦点レーザー顕微鏡によるCD36分子と結核菌との3次元的関係の観察 結核菌に対する抗体とCD36分子に対する抗体を利用して、両者の関係を観察したところ結核菌とCD36分子との明らかな相互作用は観察されなかった。 5)感染によるCD36およびPPARγの発現への影響 感染によりCD36分子の発現は低下し、PPARγ発現も低下傾向を認めた。この時、マクロファージ脂肪酸濃度は低下傾向を示していた。 以上を総合すると、結核菌のマクロファージへの感染成立においてCD36が直接に関与するという証拠は認めなかった。しかし、結核菌感染により細胞内脂肪酸が消費され、それがCD36発現やPPARγ発現へ負の影響を与えている可能性が考えられた。このことはマクロファージの活性化の抑制を招来すると考えられ、炎症反応による結核菌排除機構を抑制することに、CD36が間接的に関与する可能性を示唆する。
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