研究概要 |
培養マクロファージ(RPMI培地)に結核菌液を添加し,培養・洗浄後に単位容積あたりの結核菌数(抗酸菌染色)と細胞数とを決定し,両者の比率を感染の指標とした。この感染実験を抗CD36抗体存在下および非存在下で行って,結核菌/細胞数比を求め比較した。5回の実験の結果,CD36抗体添加は比に有意な影響を与えなかった。また,タイプI CD36欠損者から採取した単球由来マクロファージに対して、感染実験を行ったところ,欠損者マクロファージ(n=3)の結核菌/細胞数比は正常コントロールと差を認めなかった。 共焦点レーザー顕微鏡による検討から、結核菌感染後のCD36分子は感染前と比較して,細胞表面に分布する割合が多い印象があったが,結核菌との明瞭な関係は観察されなかった。結核菌感染によりCD36分子の発現は低下傾向を示し、PPARγ発現も低下傾向を認めたが統計学的に有意な変化ではなかった。 キャピラリーガスクロマトグラフィーで感染実験後のマクロファージ脂肪酸濃度は,未感染細胞との比較では低下傾向を示していたが有意ではなかった。脂肪酸分画では感染後にもともと存在した多価不飽和脂肪酸が減少する傾向(統計学的に有意ではない)のほか,結核菌体由来と思われる長鎖脂肪酸の新たなピークが認められた。 総合すると、結核菌のマクロファージへの感染においてCD36が直接に関与するという証拠は得られなかった。しかし、結核菌感染により元々存在した脂肪酸が消費され、一方で結核菌による脂肪酸分画の変化が起き,それらがCD36発現やPPARγ発現へ負の影響を与える可能性も否定できない結果であった。結核菌感染がCD36やPPARγの発現の変化を通じてマクロファージ活性化を抑制する可能性についてより精細な検討を続ける必要がある。
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