FVII分子の触媒領域の基質結合部位近傍に新たなアミノ酸変異(FVIIG331Sホモ接合体例)をもつFVII異常症を見い出した。 G331位をS、D、W、Fに置換した組み換え異常FVIIを作成し、TF存在下における基質との相互作用を解析した。400μg/mlに調整したwt FVIIおよびFVII331S、FVII331D、FVII331W、FVII331Fはヒト血漿中のFVIIcの146%、2.8%、5.0%、6.2%、3.6%であった。sTF存在下での野生型(wt)FVIIaによる合成基質のアミド分解(km=1.1mM)は変異型(mt)FVIIaと比較して有意の差はなかった。FXに対するwt FVIIaのKmとVmaxは各々33nMと0.0143/minであった。一方、FVII331Sは各々250nMと0.005/min、FVII331D:143nMと0.0033/min、FVII331W:500nMと0.0017/min、FVII331F:500nMと0.0017minであった。また、FIXに対するwt FVIIaのKmとVmaxは各々26.2nMと0.0083/minであった。FVII331SのKmとVmaxは各々340nMと0.0065/min、FVII331Dは330nMと0.0066/min、FVII331Wは500nMと0.0017/min、FVII331Fは500nMと0.0017minであった。コンピューターグラフィックスを用いた分子モデルではG331はC310-C329とD338との間に位置し、酵素の基質結合ポッケトの底にあり、G331とD338との間で適切な空間(5.88Å)をもって機能しているものと思われる。 上記の成績より、異常FVIIはP1 siteに位置するD338との間の環境が変化し、高分子基質との結合に立体障害を生じて、ペプチド合成基質の認識や分解に関係しないものの、高分子基質との親和性の低下が機能異常の原因と考えられた。
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