研究概要 |
Candida血流感染症の全国サーベイランスに基づく起炎菌種分布と抗真菌薬感受性の解析に引き続き、本年度は菌種および感受性と背景因子、予後因子との関連の解析を行った。326症例の臨床背景因子から、Candida血流感染症の治療薬として最も汎用されるフルコナゾールに対する耐性を予測する因子を解析した。単変量解析では、年齢、基礎疾患が造血器悪性腫瘍、免疫抑制剤投与および好中球減少が有意に相関していた。多変量解析によると、造血器悪性腫瘍(P=0.009,オッズ比6.59,95%信頼区間1.6-26.9)のみがFCZ耐性と有意に相関しており、抗真菌薬予防投薬の普及の影響が考えられた。 更に治療内容および予後の情報まで収集された242症例において、1ヶ月生存を予測する因子の解明を試みた。菌種、抗真菌薬感受性、臨床背景因子を含めた解析を行った結果、単変量解析では菌種(C. parapsilosis)、年齢(70歳未満)、好中球減少なし、腹部手術後、適切な抗真菌薬治療、中心静脈カテーテルの抜去、が有意に1ヶ月生存と相関していた。多変量解析では、菌種(C. parapsilosisであること,P=0.009,オッズ比3.3,95%信頼区間1.2-9.0)、適切な抗真菌薬治療(P=0.03,オッズ比2.1,95%信頼区間1.1-4.1)、中心静脈カテーテルの抜去(P<0.001,オッズ比6.0,95%信頼区間2.2-16.1)のみが1ヶ月生存と相関する独立因子であった。すなわち、Candida血流感染症患者の予後改善のためには中心静脈カテーテルの早期抜去と十分量・期間の抗真菌薬投与を推進すべきであることが示唆された。 これらの研究成果は、わが国における深在性真菌症診療ガイドライン作成時の資料として非常に貴重なデータとなるものと考えられた。
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