研究概要 |
咋年度に開発した分析法(本法)の基礎的、臨床的評価を行った。本法は現状では標準となるものを用いていないのでHDL,LDLは直接法による測定値,VLDLは本法の分画%に総コレステロールを乗じ,ポリアクリルアミド電気泳動法(リポフォー)によるリポ蛋白測定値との相対評価を行い,健常者では近似した値と良好な相関を得た。しかしながら、高脂血症患者では乖離する症例もみられ,リポフォーのミッドバンドやHDL,LDLコレステロール直接測定法ではVLDLを含んで測定している可能性を示唆するデータを得た。健常者の本法での分画値(mean±2SD,参考値)はfHDL19.5±5.2(%),iHDL55.5±6.3(%),sHDL25.0±7.0(%),fLDL60.4±9.0(%),iLDL25.7±6.1%,sLDL13.9±8.0(%),VLDL25.0±7.0(mg/dL)であった。また,健常者では本法のfHDL,TG高値者ではsHDL,VLDL,CK高値者ではiHDL,fLDL,ALT高値者ではiLDL分画にそれぞれ高値傾向がみられ,本法は疾患により測定値が異なることが示唆された。本法とアポ蛋白との関係はHDL,LDL,VLDLの大分類では従来から報告されている分布と相似したが、HDL,LDLそれぞれの3分画中の分布は均一ではないことが示唆された。現在、一般に用いられている指標であるリポフォー・MI(migration index)は本法のVLDL,LDL-コレステロールとアポ蛋白B比(LDL-C/apoB)はiHDL,iLDLとアポ蛋白A-Iとアポ蛋白Bの比(apoA-I/apoB)はfHDLと強い有意な相関が認められた。本法は既存の脂質分析法の問題点を解析できる新たな手法として、その有用性が示唆され、今後も、本法を用いた研究をさらに進める予定である。
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